東京の中心で「羅生門」を観る−国立映画アーカイブ
みなさんこんにちは。
あっという間に10月が終わってしまいましたね。管理人は自宅で仕事をしつつ、東京駅から徒歩圏内にある国立映画アーカイブで開催された「生誕100周年記念 映画俳優 三船敏郎」を訪問してきました。
三船敏郎といえばそう、黒澤明監督とタッグを組んで、戦後日本映画界を牽引した名俳優。会期は10月2日から10月22日までと非常に短いながら、27タイトルも公開されるというマニアにとってはたまらない今回の企画。これはもう行くしかありません…。
今回鑑賞したのは『羅生門』
『羅生門』はみなさんご存知、芥川龍之介による小説『藪の中』をベースに作った脚本に黒澤明が手を加えたストーリー。朽ち果てた羅生門の下、侍が殺された事件の参考人として検非違使に出頭した旅法師と杣売り(そまうり)が先ほどまで見聞きしたなんとも奇妙な話を、たまたまその場に居合わせた主人公に語るところから、物語が始まります。
−侍殺しの事件に関係者は、盗賊・被害者である死んだ侍・その侍の奥方−
−侍は“誰”に殺されたのか−
社会を意識して作りあげた虚構を認知した瞬間からそれぞれが抱える本心を意識するようになり、虚構と虚栄心が完全に剥がれ落ち、本心の正体が一人の人間が抱えている生物としての「ヒト」と社会の中で生きる「人」の間にある矛盾そのものであると気付いた時にはすでにスクリーンから目を離せなくなっていました。
同時に、自分自身も剥き出しにされ、醜くとも自分の中にも確かに存在する矛盾の存在を突きつけられているような感覚に陥ります。
それにしても、三船扮する多嚢丸への印象の変化のすさまじいこと。
「あ、この人間違いなく悪人だ」ってピンとくるアウトローを擬人化したビジュアル&言動で登場するのに…実は誰よりも社会に取り縛られた存在なのかもしれないと感じた途端、「道化」という言葉が頭をよぎり、どれほど自由に見えても「常識」という存在に縛られる人間がほとんどなのだと意識させられます。
気になる侍殺しの犯人は、物語の最後まで明かされることはありません。
三人に対して少なからず感情移入できる部分があるからでしょうか。登場人物のうち誰かが犯人のはずなのに、誰が犯人でもおかしくないし、誰が犯人でも疑問を抱くでしょう。
作品を見たことのある方が身近にいれば、犯人は誰なのかを考える推理合戦を一緒楽しめそうです。
同館では企画展「公開70周年記念 映画『羅生門』展」https://www.nfaj.go.jp/exhibition/rashomon2020/も開催中。