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【レポート】 洋画・日本画・現代アートによる異色の共演―コラボレーション企画展 「川端龍子vs.高橋龍太郎コレクション ―会田誠・鴻池朋子・天明屋尚・山口晃―」特別観覧会レポート

大田区川端龍子記念館で、コラボレーション企画展 「川端龍子vs.高橋龍太郎コレクション ―会田誠鴻池朋子天明屋尚山口晃―」が開催中です。

 

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会場芸術を唱え独自の路線を拓いた日本画家・川端龍子。当作家の代表作と、大田区蒲田でクリニックを経営する精神科医であり日本屈指の現代アートコレクターとしても著名な高橋龍太郎氏のコレクション2,000点から選ばれた現代アートを一緒に楽しめる本展。

 

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川端龍子

龍子ファンが現代アートの世界に触れ、現代アートファンが龍子の作品の魅力を再発見できる展覧会を試みました。

 

本展にかける思いを肌で感じられる、かなりユニークな内容でした。

 

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川端龍子香炉峰》1939 年、大田区立龍子記念館

いわゆる戦争画ですね。画面からはみ出すほど大きく描かれた戦闘機。半透明の機体後部は眼下に広がる風光明媚な蘆山の景観が透けて見え、機体前部と尾翼の勇壮さとは対象的です。背景に広がる深い緑を、中央に配された機体の日の丸と尾翼の朱色が画面をグッと締めることで、作品全体に静かな緊張感があります。

 

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会田誠 《紐育空爆之図(戦争画 RETURNS)》1996 年、高橋龍太郎コレクション

ホログラムペーパーによる零戦の連なりが描く∞(無限大)。背景に広がるのはニューヨーク・マンハッタンの街並み。あちこちから炎が上がり、くすぶるような金色の煙と黒い建物も相まって、地上で「何が」起きているか、いやが応でも想像させられます。

 

「戦争」と「零戦」同じテーマをもとに手がけられた作品を見比べていると、両者の不思議な響き合いを感じます。




西洋画から日本画に転向した川端龍子の作品には、和洋折衷というか、こってりとあっさりを行き交うというか、日本画という枠を飛び越えた独特の雰囲気があります。それがまた現代アートと絶妙にマッチしていて、つい展示室内を行ったり来たりしてしまいました。

迫力はあっても妙な圧迫感は感じさせない龍子作品がきっかけで、日本画の魅力に気づく現代アートファンが増えるかもしれません。

 

川端龍子…これから来るかも?






【展覧会詳細】

コラボレーション企画展 「川端龍子vs.高橋龍太郎コレクション ―会田誠鴻池朋子天明屋尚山口晃―」

 

会期:令和3年9月4日(土)~ 11月7日(日)

会場:大田区川端龍子記念館

   https://www.ota-bunka.or.jp/facilities/ryushi/access

入館料:大人500円、小人250円

    ※65歳以上(要証明)と6歳未満は無料

主催:(公財)大田区文化振興協会、後援 朝日新聞東京総局、日本経済新聞社

公式:

https://www.ota-bunka.or.jp/facilities/ryushi/exhibition?23564