博物館は誰のもの

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【レポート】「巨大画像で迫る五大絵師−北斎・広重・宗達・光琳・若冲の世界−」で体感する新感覚な絵画の楽しみ方

夏だ!海だ!旅行だ!イベントだ!

…とは、なかなかいかない今年の夏。そんななか、見逃せないアートイベントが有ることをご存知でしょうか。

 

デジタルアート展「巨大画像で迫る五大絵師−北斎・広重・宗達光琳若冲の世界−」

https://faaj.art

です。

 

縦7m横45mのワイドスクリーンに登場するのは、葛飾北斎歌川広重俵屋宗達尾形光琳伊藤若冲など日本美術史に名を残す、錚々たる面子が手掛けた作品。この展覧会では、3面シアターをただ映すのではなく、超高精細デジタルアートとして音楽と一緒に楽しめるんです。

 

今回特に面白いと感じたのは、浮世絵に関するものでした。浮世絵ってもともと庶民が気軽に楽しむものとして誕生した経緯があるから、魅力や楽しみ方は知っていたつもりだったのですが、今回改めて気付かされた部分も多かったんです。

 

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荒波に揉まれる船から振り落とされまいと必死ななか、こちらのピンチなんて関係ないと言わんばかりに画面中央に座する富士山。画面いっぱいに映し出される葛飾北斎『冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏』を見ていると、絵画を『観る』のではなく、自身が絵画の登場人物になったような『臨場感』と『没入感』を次第に感じます。

 

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会場でぜひとも注目していただきたいのが、波の色使い。波の立体感とリアルさを生み出すのに、濃紺・青色・水色・白色がいかに効果的に使い分けられているかが、巨大画像を見ることで感覚的にわかると思います。

それにしても、これだけ拡大しても画面が持つほど考えられた構図と書き込みのこまやかさに、この絵の凄さに改めて気付かされた気持ちです。



同じく浮世絵で水と波の表現に注目していただきたいのが、こちらも同じく北斎『冨嶽三十六景 東海道金谷ノ不二』

 

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水量も勢いもある大井川と、川を渡る人々の様子を描いた作品です。先程の作品の波がブロックなら、こちらは細かく規則正しく並ぶレースといったところでしょうか。同じ水でも勢いと量感の違いが伝わってきます。

 

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架橋や船での往来が禁止されていた大井川では、川越しの人足や馬を利用した徒渡しが行われていました。同じ旅人でも、人足に背負われる人がいれば、駕籠に乗ったままの状態で運ばれる人もいて、身分と予算に応じて色んな方法があったことがわかります。川越しの人足の掛け声や旅人たちの会話が聞こえてきそうですね。




名画をただ観るのではなく、五感をフル活用して楽しめるなんて、とても贅沢な体験。

新感覚のアート体験、この夏にぜひ楽しんでくださいね。